精神疾患の障害年金

精神の障害に関する障害年金の認定基準は、病気の原因や症状、治療およびその病状の経過、具体的な日常生活状況等により、総合的に認定するものとされています。

障害年金の申請時に提出した診断書をもとに、上記の認定基準に照らし合されて等級が決定されます。「統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害、気分(感情)障害」、「器質性精神障害(アルツハイマー病、脳梗塞など))」、「てんかん」、「知的障害」、「発達障害」はさらに細かな認定基準があります。

障害年金の認定基準には、「人格障害(パーソナリティ障害)と神経症は認定の対象にならない」と定められています。

ただし、神経症であっても、うつ状態であるなど精神病の病態備考欄への記載が必要)を示しており、食事や入浴などの介助が必要な場合においては、認定される可能性があります。

なお、診断書には(判断にあたっては、単身で生活するとしたら可能かで判断してください。)と記載されていますが、審査では、単身者(一人暮らし)の場合、一人でも生活できているとみなされ、不利な取り扱いとなります。  

【人格障害、神経症とは】

パーソナリティ障害、境界性・分裂病型などの人格障害、不安神経症、不安障害、PTSD(心的外傷後ストレス障害)、パニック障害、社交不安障害、恐怖症、強迫性障害、心気症、ヒステリー、転換性障害、解離性障害、離人性障害、解離性同一性障害、気分変調症…といった病気を指します。

  

日常生活能力の判定・程度欄について

精神の診断書では、診断書裏面の「日常生活能力の判定」欄・「日常生活能力の程度」欄という記載項目があり、精神の障害の程度の認定において、最も重要な部分となります。もちろんこの欄の記載のみによって、障害の程度・等級が認定されるわけではありませんが、重要な記載項目の一つであることは間違いありません。

 診断書には「(判断にあたっては、単身で生活するとしたら可能かで判断してください。)」と記載されています。

◆助言や指導が必要とは、どういうことを指すか?

まず前提として、すべての項目について共通しているのは、「病院や施設、家庭ではなく、本人の一人暮らしを想定する」ことと、「助言や指導を必要とすることで、身体介護を含まない」ということです。つまり、保護や援助をしてくれる人がいない状況でどうかと問われているということと、スプーンで食事介助をするといった身体的なことではなく、助言や指導の必要性をたずねているということです。

 

 まず「日常生活の判定」という項目で
(1) 適切な食事
(2) 身辺の清潔保持
(3) 金銭管理と買い物
(4) 通院と服薬
(5) 他人との意思伝達及び対人関係
(6) 身辺の安全保持及び危機対応
(7) 社会性
 
7項目に対して
A
 できる
B
 時に助言や指導が必要
C
 助言や指導が必要
D
 できない
(※実際の診断書より簡単に表現しています)
 
4段階で医師が評価し、おおむね
D
→1級、C→2級、B→3級 A→非該当
そして、もうひとつ「日常生活能力の程度」という項目で
A
 社会生活は普通にできる
B
 日常生活は普通にできるが社会生活には援助が必要
C
 日常生活に時に援助が必要
D
 日常生活の多くに援助が必要
E
 日常生活に常時援助が必要
(※実際の診断書より簡単に表現しています)
 
5段階で医師が評価し、おおむね
E
→1級、D→1~2級、C→2~3級、B→3級~不支給 A→非該当
と言われています。
(最終的には診断書の他の項目や、本人の申立書もふまえ総合的に審査が行われます。)

1⃣適切な食事摂取

耳慣れない言葉です。自分からバランスの良い食事を用意して、規則的に食事ができていますか? 起きるのが遅くて1日2食になっているとか、血糖値が高いのに過食する、甘いものを食べてしまう、親が食事を用意しており自分ではできないという場合は、「自発的にはできない」「できない」ということになります。一人暮らしの人が、コンビニで食事を調達する場合、偏りがないかが問題です。決まったものしか買わない場合などは「できない」になります。ある事例では、1週間に一度親がアパートを訪ね、日頃本人が買わない食品をまとめて手渡していました。身近な人にしかわからないことですので、日々の暮らしに注意してください。

 

2⃣身辺の清潔保持

これも難しい表現で、範囲が広いです。まず風呂に入れるかということが頭に浮かびますが、お風呂には入るがお湯に浸かるだけという人が少なくありません。身体を洗わない、髪を洗わない、洗っても一部だけということもあります。お風呂は疲労感の強い人には大仕事のようです。服装も、上の服は着替えるけど、下着は取り替えない。気候に釣り合わない服装で大汗をかくとか、逆に寒い時期に極端な薄着をするといったことも、清潔とは直接結びつかなくても身辺のことが適切にできていないということです。床屋に行かないので、親が髪を切っているという場合もあるでしょう。いずれも「自発的にはできない」ことになりますが、こうしたことに本人は気がついていないか、気がついていても主治医には言いにくいことです。家族にとっては日常手伝ったり、注意したりしている事柄です。助言も援助も受けつけないのであきらめたという場合もあるでしょう。しかしこうしたことは意識しておかないと、「何とかやれている」という言葉に集約されてしまいます。一人暮らしの方で、ヘルパーさんが家の中に入って初めて、お風呂場が全く使われてなかったことがわかった事例もあります。生活の内容は本人から聞いたり外から見たりしただけではわからないことが多くあります。

 

3⃣金銭管理と買物金銭管理

お金の使いすぎを考えがちですが、使わなすぎも問題です。特に一人暮らしで、極端にお金を使わないで、生活内容全体が貧困になっている場合は、重い生活障がいがあると言ってよいと思います。お金が減ることに強い不安があって、買えない人もいます。いずれも「できない」「自発的にはできない」になるでしょう。「節約」と「買えない」は全く性質の違うものです。また目覚まし時計など、同じものをいくつも買ってしまう人がいました。本人も悩んでいましたが、止められずにいます。買物が適切に「できない」という状態です。買物で品物が選べずに、結局一人では買えないで帰るという人もいます。金銭管理とは関係しませんが、やはり生活上の障がいです。お金を使いすぎるというのは、自由に使えるお金との関係もありますから一概に言えませんが、使い方の問題があります。数日で使い果たしてしまうために、分割して渡していることもあります。たばこと缶コーヒーで全部使うとか、パチンコに使ってしまうとか、計画的にバランス良く使えない悩みがあれば、「自発的にはできない」状況です。今一度見直してみてください。

 

4⃣通院と服薬

通院は毎回決められたとおり、自分で行けていますか?薬は自分で管理して、問題なく飲めていますか?通院日については家族が常に気にかけて本人を促しているとか、時には一緒に付いて行っている人も多いのではないでしょうか。ご本人が通院や服薬を嫌がるということもあるでしょう。また一人で行っていても、主治医に状況を話せない、薬はもらってくるが生活が不規則で定められたとおりに飲めない、薬の量や種類を自分流に調節してしまうといった悩みをよく聞きます。一人で通院している、また自己管理しているから問題がないとは言えません。服薬状況は一人暮らしの場合は特に気がかりなところです。本人との対話、病状の揺れ動きに注意するとともに、主治医や関係者と連絡をとりあって、通院や服薬の状況を把握しておきましょう。

 

5⃣他人との意思伝達及び対人関係

これもわかりにくい表現です。意思伝達というと、発語の能力や言葉の理解力と捉えがちですが、精神障がいの場合はそのことを問題としていません。家族も含めて、人に対して自分の意思や意見が言えたり、会話が自らスムーズにできるかどうか、場に応じた受け答えや挨拶、会話ができるか、あるいは緊張や不安の度合いなどが問題にされるところです。まず家でも外でもあまり話さないで返事をするくらいという、会話が少ない人が多いです。意思伝達に自発性が少なく、不十分ということですね。自室や家に引きこもりがちであるとか、人の多い所は緊張や不安が強く、出にくい場合も対人関係に大きな問題があるといえます。また統合失調症の人は注意力の幅が狭まって、結果的に対人関係がうまくいかない場合があります。母親と同じ町内に独りで住んでいて、毎日のように道で母親とすれ違うのに、全く気がつかないという事例があります。知らぬ振りをしているのではなく、気づかないのですが、他人の場合は誤解されることになってしまいます。およそ日常的なことなので、慣れてしまっていることが多いのですが、時々意識してみてください。

 

6⃣身辺の安全保持及び危機対応

どういうことを指しているのかわからないという質問の多い項目です。精神障がいで問題になるのは、たばこの火の始末があります。灰皿が山のようになっていたり、消し方が不十分な場合があります。また精神症状のためにぼーっとしてしまって、ガスコンロの火をつけっぱなしにしたためにぼやを起こした事例もありました。注意力がうまく働かないときは、火の始末ばかりでなく、自炊で包丁を使うときや、道を歩いているときの車や自転車への注意も不十分になります。薬が多く体が思うように動きづらい場合も、身辺の安全保持・危機対応は困難と判断すべきでしょう。  以上、6つの項目について説明しましたが、他にも個人によってさまざまな困難性があります。長い間に声をかけたり、手助けすることが当たり前になっている日常をもう一度、客観的に見直してください。 1つ1つについて人それぞれ、さまざまな問題があります。マイナス面ばかり強調するようですが、障害年金の診断書は、困難性を明確にすることが求められています。しっかりと生活上の障がい(困難性)を主張してください。 

精神疾患の診断書と就労状況について

精神疾患による障害年金の診断書には、他の傷病における診断書には無い項目があります。 それは、「現症時の就労状況」です。

この部分の記載内容は、 勤務先、雇用形態、勤続年数、仕事の頻度、仕事の内容、仕事場での援助内容や意思疎通の状況に加え、「ひと月の給与」という項目があります。 なぜ「ひと月の給与」欄が設けられているのか非常に疑問に感じますが、診断書に項目が設けられている以上、なんらかの形で審査に影響を与えていることは間違いありません。

「軽労働は可能」などと記載があると、労働能力ありと見なされる場合があります。

 

障害の程度について

「機能に相当程度の障害を残すもの」とは日常生活における動作の多くが「一人で全くできない」または「一人でできるが非常に不自由な場合」とされています。 「機能障害を残すもの」とは、日常生活における動作の一部が「一人で全くできない場合」または「一人でできてもやや不自由な場合」とされています。また、近年では脳疾患後遺症として「高次脳機能障害」が障害認定されるケースも増えています。高次脳機能障害は、外傷または脳血管疾患で脳機能に損傷を負い、人格変化や記憶障害、失語症などを生じている状態で、このような場合には、「肢体の障害」だけでなく「精神の障害」を使用する事もあります。障害者手帳は取得したけれど、障害年金は受給していない、という方も多くおられます。 受給漏れになっていることが意外に多いのが肢体の障害です。もちろんこれらは就労していても受給することができます。

働いている場合の障害年金受給

 「働いていても障害年金を受給することはできますか?」という質問をよく受けますが、障害の程度を定めている国民年金法施行令および厚生年金法施行令では、おおむね次のような内容となっています。

 

1級】
日常生活において誰かの介護が常に必要な状態。
2級】
必ずしも介助は必要ないが、日常生活に著しい制限があり、活動範囲は家の中に限られる状態。
3級】
労働に制限を受けるか、または労働に著しい制限を加えることを必要とする状態。
この基準でいけば、1級、2級は労働できない状態となります。

 

厚生労働省が平成27年に公表した「平成26年度障害年金受給者実態調査の結果」によると、障害年金の受給者で就業している方は27.6%(男性33.9%、女性20.1%)となっており、1級、2級の認定を受けながらも働いている方はおられます。

しかし、精神疾患の場合、精神障害の重症度を判定する具体的な指標がないため、一般的な判定の基本である日常生活や就労状況で審査が行われます。

 

障害年金の精神疾患に関する基準は、
「①統合失調症、気分障害」
「②器質性精神障害」(認知症と意識障害)
「③てんかん」
「④知的障害」
「⑤発達障害」の5つに区分されています。

 

このうち、①統合失調症、気分障害に関しては「就労していても、直ちに日常生活能力が向上したものとは捉えず、療養状況を考慮し、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況などを十分確認したうえで判断する」とされています。

 

また④知的障害⑤発達障害についても、「勤労支援施設や小規模作業所などに参加する者に限らず、雇用契約により一般就労をしている者であっても、援助や配慮のもとで労働に従事している。したがって、労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず、現に労働に従事している者については、その療養状況を考慮するとともに、仕事の種類、内容、従事している期間、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意志疎通の状況等を十分確認したうえで日常生活能力を判断すること」というようにほぼ同じ記述があります。

 

当オフィスでも、一般企業に就労(障害者雇用)し、社会保険に加入されている方(広汎性発達障害)から障害年金申請のご依頼をいただき、サポートを行いましたが、結果は5年前に遡及して、障害基礎年金2級(初診は、国民年金加入中)に認定されました。

 

以上のように「就労=不支給」とは限りません。働きながらでも障害年金を受けることができる可能性はあります。

働いている場合の診断書記載上の注意点

 特に以下は必ず診断書裏面「エ 現症時の就労状況」に記載してもらうよう、医師に詳しくお伝えしてください。

  

障害者雇用制度を利用しない一般企業や自営・家業等で就労している場合は、仕事内容および就労中に受けている援助

 【具体例】

派遣先に一人でたどり着けないので、必ず誰かと一緒に行くようにしている。

口頭での指示では内容を間違って理解しがちなので、必ずメモやメールで指示をもらっている。

計算ミスを起こしやすいので数字を扱う仕事から異動させてもらった。等

 

発病後も継続雇用されている場合は、発病前の就労状況と、現在の仕事の内容や仕事場での援助の有無

 【具体例】

発病前は総務部に所属していたが、電話がとれなくなったので倉庫係に異動になった

上司や同僚からの声掛けや具体的指示を受けることでどうにか仕事をしている

出勤状況への影響(頻回の欠勤・早退・遅刻など)や、仕事場での臨機応変な対応や意思疎通に困難な状況が見られる状況

 

 【診断書の記入欄は以下のようになっています。】

 できるだけ以下の記入欄に沿ってメモを作り、医師に渡しましょう。


※日本年金機構より、障害年金診断書(精神疾患)を作成する医師向けに、診断書記載要領が公表されています。 

詳しくはこちら  

ICDー10コードについて

精神の疾患用の診断書の「障害の原因となった傷病名」の欄にはICD-10コードを記入する部分があります。ICD-10とは死因や疾病の国際的な統計基準として、世界保健機関(WHO)が公表した分類のことです。精神障害については、F00F99のコードで分類がされています。

診断書にICD-10コードを記入するのは、精神障害だけですが、これには神経症および人格障害が原則として障害認定の対象傷病とならないことが関係しています。ICD-10コードのF4で始まるのが神経症、F6で始まるのが人格障害です。診断書のついている「記入上の注意」にも以下のように明記されています。

 

 「①障害の原因となった傷病名」欄に神経症圏(ICD-10コードが「F4」)の傷病名を記入した場合で、「統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害」または「気分(感情)障害」の病態を示しているときは、「⑬備考」欄にその旨と、示している病態のICD-10コードを記入してください。

したがって、傷病名がF4かF6であり、備考欄に統合失調症や気分(感情)障害についての記載が無い場合は、認定の対象外とされることになります。

また以下の傷病は名前が神経症・パーソナリティ障害(=人格障害)でもコードがF3なので障害年金の対象傷病になります。
神経症性抑うつ状態 F341   
抑うつ神経症 F341   
抑うつ性パーソナリティ障害 F341

精神疾患の併存

知的障害や発達障害と他の精神疾患を併発しているケースについては、障害の特質性から初診日及び障害状態の認定契機のついて次のとおり整理するが、 認定に当たっては、これらを目安に発病の経過や症状から総合的に判断するとされています。

【厚生労働省が示している一定の基準】

(1)原則として同一傷病とされるケ-ス

①うつ病・統合失調症→発達障害 ②発達障害→うつ病・精神病様態の神経症 ③知的障害→うつ病 ④知的障害→発達障害 (例外として3級不該当程度の知的障害の場合は別傷病)

(2)原則として別傷病とされるケ-ス

①知的障害→精神病様態の神経症 (例外として統合失調症・うつ病の病態を併発していればそれぞれの基準に準じて判断) ②発達障害・知的障害→統合失調症 (例外として統合失調症の様態を示す発達・知的障害である場合は同一傷病)

しかし、あくまでこれら目安に発病の経過や症状から総合的に判断することになりますので、最終的には、個々のケースごとに判断が必要となります。